自作小説『阿修羅王』
あらすじ 阿修羅王はグランディオから脱出するため上層階を目指す。
エピソード2
雷電

B950F


エピソード1


「フム、行けども行けども、土の壁と死体だけ。不衛生極まりないことだ」
雷電がしかめっ面で呟く。
かろうじて水銀灯の灯る洞内には死臭と蝿の音で満ちている。
阿修羅は口元を手の甲で覆いながら答えた。
「ここらへんは遊郭街だったんだ。たぶん、そこいらにある死体は娼婦や男娼たちだろうな。もともと栄養のあるもんなんか食っていなかったから、死ぬのもはやかったんだろ」
雷電は淡々と説明する阿修羅を面白そうに見た。
「ほう、それにしてはおぬし、しぶとかったようだが」
「悪かったな。見ての通り、俺は闇人と獣人の混血だ。ほかの奴らより、頑丈なんだよ」
「んじゃあ、黒猫ちゃんよぉ。ここで死んでんのはどんな種族だったんだ?」
BLOODが尋ねてくる。いったい彼がどこから声を出しているのか未だにわからない。
「そうだな。闇人と緑玉人、それに人が多かったかな」
「ほう、人とは珍しいな」
「ああ、そうらしいね。地球って惑星の種族だろ?」
「人の生息地は何も地球だけではないぞ。まあ、どちらにしても今では絶滅寸前だ。そうだな、地球もだいぶ様変わりしたそうだし、ここから出たら、一度行ってみるか?」
「行けるの?」
阿修羅は猫のような耳をひくりとさせる。
「塔最上階にはグランディオの王の千枚葉船がある。それを拝借し、死ぬほどの努力をすればやがて行けるだろう」
「死ぬほどって……簡単に言うなよ……」
「自分の国をつくるのだ。そのくらいできぬようではな」
そう云って、雷電は楽しげに笑った。




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